先人が黙黙とやってきたことを知るほどに 私ごときが日本酒を云々言うのはおこがましいと思い控え目にしておりましたが、「マイタのブログ」を見てくださっているかたがたには素直な気持ちを小出しに吐露していくことに決めました。
日本酒を ほぼ毎日口に含む生活を30年以上続けていますので 時代ごとに移り変わる風味の主流みたいなものは少なからず感じております。

何処の業界も同じだと思いますが、日本酒の世界もご多分に漏れず そのときどきのライフスタイルや世間の様相などに合った「時代が求める要素を持ったもの」が脚光を浴びて流行が産まれ、やがてひと通り行き渡ると 多くのものはそこでニーズを失い次の流行が現れます。
その「時代が求める要素」というのが元より備わっていたものと、流行を察して意図的につくったものとでは本質的な部分で違いがあるのですが、技術の進歩により前者と後者の区別がつかないくらい近似していることもあります。
日本酒の場合、そういうときはだいたい時間が教えてくれると体験から感じています。
確かな技術でつくられた品質の良いものは栓を開けた日は当然美味しく、その翌日、さらにその翌日…と、ある程度の日数 良い変化をしていきます。当店ではお客さんとの会話でよく使う言葉ですが「日持ちする酒」というのがそれですね。
今の時代、というか数年前からの流行は「日持ちしない酒」。
シン日本酒に求められるのは分かりやすい旨味とインパクトの強さ、一方でとてもデリケートな品質が特徴です。お酒はし好品ですからね、そのように多様性があるのはいいことだと思います。
以前よりも飽きられやすい世の中だと言われてますので、そろそろ次の流行が芽生えていることでしょう。
残された資料を読み解く限り、大雑把に言うと日本酒の味の流行は甘口から辛口へ、そしてまた甘口と繰り返しています。古より変わらぬ、それが人間の性なのでしょうね。
お酒好きなら 若いころはいろいろなタイプのお酒を飲んでみたいと思うもの、それは自然なことであり 多くの人がそれを実践しています。
そうこうしているうちに自分の中で不動の存在になっている柱的な、大げさに言えば心のよりどころみたいなお酒に気付いたりして。その柱が1本の人がいれば2本の人もいて、何本までとの制限などありませんが やたらと多いのは柱とは呼べないでしょう。
飲酒歴の長い御仁がいつも同じお酒を飲んでることを不思議がる人がいますが、それがその御仁にとっての柱であり、ホッとするお酒なんですね。
それは新しい味わいを拒絶しているのではなくて 自分に合うものを知っていらっしゃるということ。そこには流行や話題性は一切関係ありません。
「いろいろ美味しいお酒は飲んできたけど、やっぱりここに戻るよね。」
そう言ってもらえるよう、造り手のかたがたにはもとから持っている個性を大切にしたお酒を造り続けていただきたいと願っております。
長いブログになってしまいましたので今日はこの辺で。
大吟醸酒が尊いものだった時代の感動的な味わいを思い出させてくれたお酒に連日魅せられて ついつい調子に乗って語ってしまいましたわ。

それでは本日も日本酒で乾杯!(^o^)丿